取締役会非設置会社について
株式会社で、取締役会を設置しているものについては、株主総会は原則として法令や定款で定められている事項について決議することができます(会社法第295条2項)。しかし、取締役会を設置していない会社(取締役会非設置会社)は、295条1項により、あらゆる件について、決議することができるとされています。
株式会社の通常業務においては、いちいち株主総会を開いて株主の意見を伺うことなく、取締役等が決裁し、執行していくべき事柄もたくさんあります。通常業務の執行にあたると思われることのうち、登記手続が必要な事項に、たとえば「自己株式の消却」などがあります。これらの登記申請を行うには、取締役会を設置している会社は、会社法第178条2項により、取締役会の決議が必要で、登記申請には取締役会議事録を添付しなければならないとされています。一方で、取締役会非設置会社では、同1項により、株式会社は自己株式を消却することができるとされているだけで、どういった決議が必要とされているか明記されていません。
そこで、これは個々の取締役の決定で可能であるのか、業務執行社員の決定でもできるのか、この場合、登記申請に必要な添付書類は何なのかよくわかりません。この点、平成18年3月31日民商第782号通達においては、取締役会非設置会社においては、取締役の過半数の一致を証する書面を添付しなければならない、とされ一定の制限をかけています。
では、取締役の過半数の一致を証する書面ではなく、株主総会で自己株式の消却を決議した場合、それは無効になるのでしょうか?
私としては、その場合でも会社法第295条1項の原則に照らし、上記の株主総会議事録を添付して、登記申請することは可能であると考えます。